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1本の時計と1秒の意味

  • 山口 祐臣
  • 2020年1月23日
  • 読了時間: 3分

 先日のことですが、講義終わりに何気なしに教室を見ると時計の忘れ物がありました。その時計を一目見て「これはきっとあの先生のものに違いない」と感じました。時間がなかった私に代わり、別の方が届けてくださりました。  後日、教授にお会いした際に気になっていたことを伺いました。「なぜあの時計を選ばれたのですか」と。ベテランの教授で学内外からの人望も厚い方がするには、シンプルでデザインも値段も控えめなものだったからです。質問をすると、笑顔で「私には華美な時計は必要がないでしょう。でも唯一選ぶ上で大事だったのは電波時計で正確だったこと。ソーラー電池で電池切れの心配もないでしょうから」続けてこうも仰いました。「もうすぐセンター試験でしょう。試験前に試験監督全員が揃って、時報を合図に時刻を合わせるのですよ。だって1秒あればマークシートひとつ書けるでしょう。受験生の人生がかかっているのですから。だから時計は大事なのですよ。」

 教授の仕事を支え、受験生たちの公平な試験環境を守るための一本のシンプルな時計。スマートフォンが普及し、腕時計などファッションや自己顕示のためであり不要なものと言われることも多い昨今ですが。まだまだ、その方ご自身の大切なパートナーとなることを教授の言葉から教えていただきました。

 販売業に限らないことですが、とかく毎日の仕事に追われていく中で自分たちの仕事の意味など考える間もなく。ひょっとすると、入社時の研修ですらそのような問いかけをされていないかもしれません。ミドルマネジメントのみならず、トップまでが数字ばかりを現場に求めてくる企業がほとんどだと思います。しかし、顧客にしてみれば、企業の業績など一切関係ありません。自らの生活を便利に、より良いものにするために買い物に来ているわけですから。  ノルマだ、売上が、予算がと自己都合を連呼する前に。顧客の皆様にどのような価値を、どういった形で提供するのか。地域や社会に自らの事業を通してどう貢献していくのか。それを真剣に考え、行動に移していくことが結果として、顧客の信頼を得て持続的な企業経営をもたらすことになるのではないでしょうか。  ちなみに余談ですが、冒頭にて書いた時計を一目見て持ち主が分かった理由は「国産」「シンプルなデザイン」「電波時計、ソーラー電池」こうした極めて実用的な要素が法律をご専門にされ、竹を割ったような教授のお人柄にぴったりでしたのでそう感じました。皆様も、時計には着ける方の内面がよく表れますので、周りの親しい方の腕元をご覧になってみてください。意外な一面を垣間見ることがあるかもしれません。

 
 
 

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