心は売り物?サービスはやらされるもの?
- 山口 祐臣
- 2017年6月21日
- 読了時間: 3分
最近、よく目にするのが「感情労働」という言葉。そして、その言葉が用いられる文章は、たいていの場合、いわゆる「おもてなし」に否定的な見解を述べています。
今しがたテレビで放送されていたのは、羽田空港のコンシェルジュの仕事ぶり。空港ならではの要素として、海外の方や空港を滅多に利用しない不慣れな方が多いこと。自国の携帯が通じない、バス乗り場が分からない、空港を間違ったなどの様々なトラブルを問題解決するまで、時にバス停まで案内するなど最後まで寄り添っています。
お客様の立場からすると、不慣れな場所、分からない言語。そして迫る時間。緊張、不安、焦り。様々な感情がない交ぜとなり、苛立ちや悲嘆の感情に襲われます。そのような時に、手助けをしてくれる人が現れたら。その方はまさに神様や仏様のように感じられるでしょう。コンシェルジュに助けてもらったお客様たちは一様に、安堵の表情とともに感謝の言葉を口にしていました。
空港の場合は特に顕著ですが、何らかの目的があってそこにいるわけです。大事な商談、楽しい旅行、友人や家族との再会。大事な目的を果たし、その方に満足や幸せな気持ちを感じて欲しいから、コンシェルジュは一生懸命にバスの経路から笹かまぼこのある売店までを調べる訳です。恐らく業務マニュアルにはそこまで具体的な指示は書いていないはず。彼らを突き動かすのは、与えられた業務に対する責任感以上の「思いやりの心」があるからです。
あなたが、夢と幸福を求めてテーマパークに行ったとして。そこでスタッフがパチンコや競馬、隣人の愚痴をタバコを吸いながらしている姿を目にしたらどう感じるでしょうか。言わずもがなでしょう。スタッフは完全に隔離された休憩室か、仕事が終わって外に出るまでは避けるべき会話です。仮に帰りの電車やカフェでも職場やお客様の愚痴話は絶対にするべきではありません。お客様の夢を守るのもプロフェッショナルとして当然です。
仮にこうしたことが嫌であったり、やらされ感しか感じられない方がいたとしたら。先ずは自らを見つめ直すこと。そして職場や労働環境に問題があるのであれば、その改善を目指すこと。それでも不満であれば、就く職場や企業を見直すべきです。確かに多くの企業が用いるCS「顧客満足度」には、毎回異なる人や、局面を公平に数値化する困難さなど解決すべき課題も多いですが、それらはより良いサービスを目指すための指標。最終的な目的はお客様に笑顔になってもらうことを目的としていることを忘れてはなりません。
さも一方的にお客様に隷属する召使いであるかのような論調が目立つのは非常に残念です。お客様が笑顔になり「ありがとう」と一言言ってくださる。時には感謝のお手紙をいただくこともあります。接客やサービスに携わる人々にとって、お客様の幸せと、人同士の心の交流が最高の報酬なのです。つまり根底の部分では「一人の人と人」として対等な立場なのです。
「おもてなし」が生み出すものは「残酷社会」などではなく、人と人が温かな気持ちの交流と相互理解を育む、より良い地域や社会、つまり「思いやり社会」なのですから。

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